グリストラップの種類をご紹介。なぜ種類や構造を理解する必要があるのか
グリストラップとは、飲食店や食品加工施設などの厨房から油分や野菜クズ、残飯などのごみが直接下水に流れ出さないようにするための設備です。グリストラップをとおさずに、排水してしまうと下水の水質を悪化させるだけでなく、排水管を詰まらせてしまうため、一定規模以上の業務用厨房などには設置が事実上義務付けられています。
しかし、グリストラップとひと口にいっても、扱う食品や厨房の形態、使用頻度によって、設置に適した場所や素材、大きさ・容量は異なります。グリストラップの設置にあたりどのようなタイプを選ぶべきなのか、お悩みの方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、グリストラップの種類と選ぶ際のポイントについてご紹介します。
グリストラップの種類
グリストラップは設置方法によって「屋内埋設型」「屋内床置型」「屋外埋設型」と大きく3つのタイプに分けられます。店舗の事情によって特殊なタイプもありますが、ほとんどはこの3種類に集約されます。それぞれ特徴がありますので、設置する店舗の形態や規模、使用する頻度に合った設備が必要となります。
また、グリストラップは油分や野菜クズなどの生ごみを下水道に流さないための設備なので、油分や生ごみが溜まります。かなりの悪臭を放つことや害虫が発生することもありますので、清掃やメンテナンスのしやすさを考えて、設置タイプを選ぶことも大切です。
屋内埋設型
屋内埋没型は、グリストラップを厨房などの床下に埋めこむタイプです。建物の外にグリストラップを設置するスペースがない場合、この屋内埋設型を選ぶことが多いようです。
このタイプのメリットは、調理の邪魔にならないことがあげられます。グリストラップの設置場所と客席の距離が近い場合は、しっかり清掃やメンテナンスを行いましょう。グリストラップの悪臭が客席にまで漂うことがあります。客席の下に設置しているときは、特に注意しましょう。
床下に設置するため深さも浅いことが多く、清掃しやすいのが特徴です。グリストラップ本体に故障や不具合が生じた場合は、調理場の排水を止めなければいけないので早急の対応が求められます。
屋内床置型
屋内床置型は、床に埋めこまず床の上にそのまま設置するタイプです。屋外に置く場合もありますが、厨房内に設置することを選ぶ飲食店がほとんどです。このタイプが使われるのは、もともと飲食店ではなかった店舗を喫茶店など小規模な飲食店として転用する場合や、コンビニエンスストアで新たに調理スペースを設ける場合などです。
調理スペースの下などに置くだけなので、設置費用が安く済むのがメリットです。しかし多くの廃水を処理できるわけではないので、多くの油や生ごみが出るような飲食店では使えません。またこまめに清掃しないと、ひどい悪臭を放ったり汚水が漏れたりといったトラブルも起きがちです。本格的な飲食店の場合は、埋設型にすることをおすすめします。
屋外埋設型
屋外埋没型は、厨房のある施設の屋外に埋設するタイプです。屋内に設置するときと違い、店内の悪臭を心配する必要はありません。また大型のグリストラップを設置できるので、大量の排水を処理できます。そのため大規模な飲食店や、郊外など敷地に余裕のある施設でよく見られます。
ただし、外に設置してあると管理がずさんになりやすいので、こまめに異常がないか確認する必要があります。また大型なグリストラップの場合、清掃やメンテナンスの負担も大きくなります。
屋内型であれば日ごろの清掃は従業員でもできますが、屋外に設置された大型設備になると清掃もかなりの重労働です。専門業者への委託を検討する必要もでてきます。
グリストラップに使われる素材の種類
グリストラップ本体の素材にも種類があります。主に「FRP製」か「ステンレス製」で、数は少ないもののコンクリート(モルタル)製のグリストラップもあります。サイズや容量、設置場所などによって使い分けられており、素材によって本体の価格にも差が出ます。
FRP製
FRPとはFiberglass Reinforced Plasticsの略で、日本語では「繊維強化プラスチック」と呼ばれます。一般的なお風呂の浴槽によく使われている素材といえば、想像しやすいでしょう。
ステンレスやコンクリートより軽く、3種類の素材の中で最も安価です。腐食する心配がないことも大きなメリットとしてあげられるでしょう。その反面、強度や熱への耐性ではほかの2種より劣り、傷がつきやすいといったデメリットがあります。
ステンレス製
さびにくく、水回りでよく使われる金属の代表格がステンレス製です。鉄やクロムとの合金で成り立っています。プラスチックであるFRPより丈夫なので、大型のグリストラップでよく使われています。
ただし、価格面ではFRPより高めです。強度もあるためFRP製より傷がつきにくく、水漏れも起きにくいのがメリットだといえます。一度腐食するときれいになりにくいので、メンテナンスには気をつけましょう。
コンクリート製
FRP製・ステンレス製に比べると数はかなり少ないものの、コンクリート(モルタル)製のグリストラップもあります。地面に穴をあけ、そこをコンクリートで固めてグリストラップにするものです。その構造上、屋外のそれなりに広いスペースが必要です。
その代わり、用途や設置するスペースの特徴に合わせてオーダーメードで設計できます。ただしコンクリートの場合、経年劣化が早いことがあるので注意が必要です。
グリストラップの種類や構造を知る理由
グリストラップは、油分や生ごみを含んだ排水をそのまま下水道に流してしまわないための設備です。そのため、グリストラップが破損したり詰まりを起こしたりすると、汚水をそのまま下水道に流してしまうことになります。
そのような事態になると下水管を詰まらせてしまう可能性が高くなり、近隣に大きな迷惑をかけてしまいます。実際に損害を与えてしまうと、賠償を求められるということもありますので軽く考えてはいけません。そのため、店の責任者もグリストラップの構造や種類についてよく知っておき、適切な清掃やメンテナンスを行うことが重要です。
グリストラップを設置する際の判断材料にする
グリストラップを設置する際、店舗の規模などにあった適切な設備を備える必要があります。個人経営の小さな喫茶店に大きな設備は必要ありませんし、レストランや食堂に小さな床置型を設置しても処理が追いつかないでしょう。1日の排水量もあわせて考えて最適な製品を選ぶためには、グリストラップの種類・構造の知識が欠かせません。
清掃する際の注意点を把握する
グリストラップの構造を理解しておけば汚れが溜まる場所もわかり、効率的に日ごろの清掃やメンテナンスができるようになります。
グリストラップはほとんどの場合、3槽で構成されます。第1槽には受けカゴ(バスケット)があり、厨房から流れてきた排水から残飯や野菜クズといった大きめの生ごみを取り除きます。
そして、第2槽に流れてきた汚水を水と油分に分離させます。油分は水の上に集まり固まります。第2槽の底には、第1槽でとりきれなかったゴミが沈殿します。第3槽までくると油分やゴミがほとんどありませんが、さらに分離したところのきれいな水を下水道に排水します。
各槽で段階的に油分やゴミを除去していくため、排水がスムーズにいくよう定期的な清掃が欠かせません。受けカゴのゴミは「生ゴミ」として毎日処分しましょう。油分と底に溜まった沈殿物は「産業廃棄物」として2〜3日に1回は処理する必要があります。ゴミの種類で処理方法が異なるので気をつけましょう。
飲食店などを開業する際の予算をハッキリさせる
グリストラップの設置は義務ではありません。しかし、下水に流す水質には厳しい罰則と基準があります。市町村の条例によって違いがありますが、もし未処理の汚水を下水道に流してしまうと、懲役刑もしくは罰金を科せられる恐れがあります。
一度罰則を受けると営業許可を再度もらうまで時間がかかり、場合によっては経営の危機へと追い込まれてしまいます。グリストラップを設置することで避けることができるリスクです。飲食店を開業する予定がある方は、グリストラップの設置費用も開業資金に組み込んでおきましょう。
建物を新築する場合はもちろん、店舗を引き継ぐ形で開業するにしても店の規模や形態にあったグリストラップを設置する必要があります。種類や構造に関する知識があれば、そうした検討もスムーズに進めることができるでしょう。
グリストラップを交換するサイクルを把握する
本体のサイズや容量、素材、使用する環境によって耐用年数は変わるので一概にはいえませんが、いずれ経年劣化は起きます。破損してしまうと、水質汚染や悪臭、害虫の発生と飲食店としては致命的な問題が発生してしまいます。そのため、定期的にメンテナンスを行い早めに対応することが必要です。
本体だけでなく、受けカゴやトラップ管、ふたなども交換が必要になることもあります。普段から、専門業者にメンテナンスを依頼してプロの目でチェックしてもらう機会を設けることも大切です。
グリストラップの清掃を行う際は産業廃棄物の理解が大事
グリストラップを清掃した際に出る油分や沈殿物は、一般ごみではなく「産業廃棄物」として処理しなければなりません。
処分の方法は、各自治体のホームページなどに記載されています。たとえば大阪府のホームページを見ると(※1)「飲食店のグリストラップ汚泥」として項目が設けられています。必ず、各自治体が定める方法で処分しましょう。産業廃棄物を一般ごみと同じように処分すると、罰則の対象となりますので注意が必要です。
※1 大阪府 次の産業廃棄物の種類は何か?
(FAQ)http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshoshido/report/faq_4.html
グリストラップで生じた汚れは産業廃棄物
大阪府のホームページによると「飲食店のグリストラップ汚泥」のうち、油分が5%以上なら「汚泥」と「廃油」の混合物、5%未満であれば「汚泥」に該当するとされています。これらは、産業廃棄物の処理が許可されている専門業者に処分を委託する必要があります。
専門業者が処理することで、汚泥であればセメントの原料や骨材、廃油は潤滑油や燃料油としてリサイクルされることになります。下水道の水質保全と同様、廃棄物のリサイクルも飲食業者としての責務です。
産業廃棄物処理法を守りキチンと清掃を行うことが大事
自治体によっては、グリストラップから出た生ごみや油分の処理方法だけでなく、グリストラップの清掃方法など維持管理の仕方についても具体的な目安を示しています。
たとえば大阪府高槻市のホームページを見ると、受けカゴ(バスケット)は毎日1回、トラップ内部は2〜3か月に1回などと清掃回数の目安について詳しく記載しています(※2)。こうしたガイドラインや法令を遵守し、適正に廃棄物処理を行いましょう。
※2 高槻市「グリーストラップの清掃について(お願い)」
http://www.city.takatsuki.osaka.jp/kakuka/toshi/gesuikik/oshirase/1435891319718.html
環境保護のために産業廃棄物について理解することが大事
日常生活で排出されるごみとは違い、事業活動によって排出されるごみ(廃棄物)のうち20種類が産業廃棄物と規定されています。これらは、一般ごみのように焼却による処理が難しいものや危険性の高いもの、汚泥や廃油のようにリサイクルされるものが対象になっています。
産業廃棄物として厳格に処理することで、危険な物質の拡散を防ぐと同時に再利用も進めているのです。産業廃棄物の仕組みそのものが、環境への負荷を低減することにつながっていることを理解し、正しい処理に努めましょう。
グリストラップの種類に応じた清掃を行うなら業者に依頼するのがおすすめ
グリストラップの清掃やメンテナンスによって生じた廃棄物は産業廃棄物として処理する必要があり、信頼できる専門業者に処理を依頼する必要があります。また、廃棄物の処理を含め、清掃やメンテナンスも業者に依頼すれば不具合や老朽化した部分も指摘してもらえ、トラブルになる前に早めの対応ができます。
グリストラップの清掃やメンテナンスを請け負う業者はいくつもあります。例えば、明治17年創業という老舗の「アイエスジー株式会社」はグリストラップ清掃の専用機器をそろえ、経験も豊富です。目立ちにくいバキュームカーや高層階でも作業できるポータブルバキュームも用意しているなど、飲食業者への配慮もあり安心して任せることができます。
まとめ
グリストラップの種類や構造、その必要性や日々の清掃・メンテナンスの重要性についてご理解いただけましたでしょうか。
グリストラップの設置や清掃には費用や手間もかかりますが、環境を守ることも事業主の努めです。おろそかにしてはいけません。対応を誤ると大きなイメージダウンにつながることもあります。事業者の責務を果たし、利用者に愛される店や施設となるようグリストラップを適切に設置し、清掃とメンテナンスもしっかり行いましょう。